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2010/10/8 静岡グランシップ  講師 医学博士 宇都宮 光明

アーク光線療法で温熱療法「期待高まる、HSP」

温熱療法
「冷えは万病の元」と言われるが、冷えには自律神経機能の失調(ストレスによる交感神経の緊張)による血行不良、代謝の低下、免疫力の低下等々に深く結び付いていることから、諸病の誘因になることは十分に考えられる。そのため冷えを解消して体を温める冷え解消の手引き書が数多く出版されているが、食品や運動の効能とか風呂(温泉)の湯温や入り方とか岩盤浴について記述した書籍が多い。
ところで今回の演題が「光線で温熱療法(熱ショック蛋白質)」になったのは、背景に温熱療法の効能が見直されていることがあってと思うが、以前に取り上げたテーマでもある。そのため重複する内容が含まれているが、改めてアーク光線による温熱療法の効能について理解を深めて頂き、ご利用頂くため、日常的に経験する変形性関節症のような運動器系疾患の痛みの治療についてやや詳しい話を付け加え、お許し頂きたいと考えている。

アーク光線の温熱作用

アーク光線で使用する医療用カーボンは約3000℃で燃焼するため、赤外線(熱線)、可視線、紫外線(冷線)からなるフルスペクトル光線を放射する。そのためアーク光線の温熱作用は一部の作用になる。その熱源は透過力に優れ体内深部を温める作用がある近赤外線の波長域の輻射線の輻射熱であるが、カーボンの燃焼に伴う熱は伝導熱として関与する。
ところでアーク光線療法の場合、一般家庭では一台の治療器で治療する局所温熱療法が用いられることが多いため、全身の各所に照射する基本照射を行うように勧めている。一方、光線治療院では閉鎖空間内で四台から五台の光線治療器を一斉に点灯し、全身各所に同時に45分前後照射する全身温熱療法(マルチアーク療法)が用いられる。この方式では対流熱を最大限に活用するため大量に発汗するが、汗腺に加え皮脂腺からの発汗がある(デトックス効果については以前に本研修会で述べた)。

赤外線療法の歴史と効能

赤外線を用いた温熱療法は、エジソンが実用化に成功した白熱電球が電力の殆どを赤外線(熱)で放出するのを利用した電光浴を嚆矢とすると思われる。その一方で赤外線治療器も開発され、その効能として、血液やリンパ液の末梢循環の改善、心拍出量の増大、発汗促進、新陳代謝の促進、老廃物の排除、筋緊張の弛緩、即効性の鎮痛効果などが挙げられていた。ところが近年になって、赤外線の温熱作用で生体を防御する熱ショック蛋白質・HSP(Heat Shock Protein)の生成が著しく促されることが明らかにされ注目されている。

アーク光線療法と鎮痛効果

熱ショック蛋白質について述べる前に、アーク光線療法の温熱作用が広く応用され、効果が体感できる鎮痛ならびに筋弛緩効果について触れておく。
変形性関節症のような運動器系疾患の痛みの治療で求められるのは、即効性のある鎮痛効果である。痛みは一般的に侵害刺激を知らせる警告信号とされているが、日常経験する変形性関節症の痛みは警告信号としては意味のない、慢性化、固定化した痛みで、患者を苦しめるだけのものが多い。このような痛みを慢性痛症と呼ぶことがあるが、交感神経の異常な緊張による虚血が原因とされる組織傷害(痛みの悪循環)、そのため繰り返し起こる痛みによる痛みの中枢性感作が関係すると考えられており、鎮痛剤は殆ど効果がない。
このような痛みに対するアーク光線の即効性がある鎮痛効果の作用機転は、赤外線の深部温熱作用により患部の深部体温が39℃度前後まで上昇するのに対応して、体温のホメオスタシスを保つため視床下部の体温調節中枢が働き、患部の血行を促して交感神経の緊張に伴う虚血状態を改善し、筋緊張を弛緩し、炎症物の吸収、排泄を促して、痛みの悪循環を断つのが主と考えられる。そのため鎮痛効果と患部への照射量との間には、ある程度の相関関係が成り立つと考えて誤りはない。すなわち痛みが激しいほど照射量、照射回数を増す必要があり、確実な鎮痛効果を体感して貰うためには、照射時間を長くするとか治療器の台数を増やすとか治療法について工夫が必要になる。なお照射し始めてから痛みが一過性に増すことがあるが、患部の血行が良くなり循環障害が改善する過程で見られることで、継続して照射することで鎮痛効果が得られることに変わりはない。しかし患者が不安を抱くのを避けるため、前以て痛みが増すことがあると話をしておく必要がある。
そして何よりも求められることは、治癒に導く治療効果を挙げることである。それには繰り返し患部の血行を促すことでエネルギーを注入して自己治癒力の向上を図ると共に鎮痛効果を体感して、痛みの中枢性感作から脱却することである。そのため治るまで根気よく治療を続けるように説得する必要がある。

熱ショック蛋白質(HSP)

熱ショック蛋白質は、1962年にリトスがショウジョウバエに温熱刺激を与えると、遺伝子発現が誘導されて新しい蛋白質を産出すると報告したことに端を発する。発見当初は余り注目されなかったが、その後の研究で細菌から高等生物の哺乳類まで共通に見られ、平常時にも生成されているが、ストレス刺激で生成量が増し生体を防御することが明らかになり、特に温熱刺激で平常時の約100倍誘導されることから熱ショック蛋白質の呼称が多用されている。言うまでもないが、アーク光線の温熱作用には熱ショック蛋白質の生成を促す作用があり、安全かつ簡便なマイルド加温療法として利用できる。なおストレスで誘導されることから、ストレス蛋白質と呼ばれることもある。

熱ショック蛋白質は蛋白質の品質を管理する

熱ショック蛋白質の主要な作用は、生物の構成成分で生体の機能を支配している蛋白質の品質管理である。例えば平常時にも熱ショック蛋白質(常在型)は生成されているが、その主な役割は、一日に作り変えられる約一兆個の細胞の蛋白質の合成、運搬、分解の機能を担っている。
一方、前以て温熱刺激を与えて熱ショック蛋白質(誘導型)を誘導しておくと、その後に加えられた傷害性のストレスや致死的なストレスを対して耐性を獲得し、蛋白質の傷害を防いで細胞を保護する。すなわちストレスで蛋白質が傷害されて正しい高次構造(フォールディングあるいは折り畳みと呼ぶ)に間違いや変性を来たすのを予防し、あるいは間違いや変性があれば、その蛋白質を標的に結合して構造や機能を制御して正常化する作用がある。このように熱ショック蛋白質は内因性生体防御効果に優れた一群の蛋白質であることが明らかにされている。
蛋白質の品質を管理する機能をシャペロン(介添人)機能と言うため、熱ショック蛋白質を分子シャペロンと言う。なお昨今、医療面で癌(リウマチ、炎症性腸疾患など)を中心に病気に伴って発現する蛋白質についての研究が急速に進歩し、蛋白質が病気の悪化に及ぼす影響が次々に解明されている。その結果、病気に伴って発現する蛋白質の作用を阻害する薬を用い治療が汎用されるようになっているが、熱ショック蛋白質のシャペロン機能にこれらの治療に準ずる効果が期待できるので、これからの研究の推移を注視したい。

熱ショック蛋白質の自然免疫亢進作用

免疫は自然治癒力の根幹をなす防御機構であり、自然免疫と獲得免疫に大別される。獲得免疫には、温熱作用がないため冷線の別称がある紫外線によって生成されるビタミンDが重要な役割を果たしており、この点については以前の本研修会で触れた。今回は熱ショック蛋白質が自然免疫を亢進させる作用について述べる。
自然免疫は先天性免疫で、すべての多細胞生物に存在する非特異的な防御機構であるが、熱ショック蛋白質によって免疫力が亢進する。かつて獲得免疫が抗原抗体反応で立ち向かうまでの空白の時間をうめる補佐的なものと考えられていたが、近年、その重要性が再認識され修正を迫られている。
自然免疫の重要性が確固たるものになったのは、抗原抗体反応の手続きなしに即座に癌細胞やウイルス感染細胞を非自己と認識して攻撃を仕掛け食作用により除去するリンパ球のNK細胞やNKT細胞による免疫監視機構による防御が明らかにされたことである。自然免疫には、外にマクロファージや樹状細胞や好中球(顆粒白血球)の食作用による防御、ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス作用を始め広範な薬理作用があるインターフェロンなどサイトカインと総称される生理活性物質による防御、補体(自然抗体)の食作用促進による防御などがある。なおマクロファージと樹状細胞は貪食した非自己の情報を獲得免疫に関わるTリンパ球に提示して、獲得免疫を始動させる作用がある。

熱ショック蛋白質の副作用予防効果

熱ショック蛋白質が細胞傷害から細胞を保護する防御作用について、患者に負担を強いる治療に伴う副作用を予防する観点からの報告を引用する。
鎮痛目的で使われる消炎鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬)の副作用の胃腸障害は誰でも知っていると思って間違いないほど有名である。鎮痛効果のメカニズムは、傷害部位で放出される発痛物質(起炎物質)のプロスタグランジンの産生を抑制する作用である。そのため傷害に起因する急性痛で効果が期待できるが、アーク光線療法と鎮痛効果で述べたような慢性痛症では効果を期待し難いのであるが、外に薬がないため使われているのが実情である。ところで発痛物質のプロスタグランジンは同時に胃粘膜保護作用を持つ防御因子として、極めて重要な働きをしている。そのためプロスタグランジンの産生が抑えられると、特に加齢で胃粘膜保護機能が低下している高齢者で、胃の攻撃因子(胃酸やペプシンのような消化酵素)の攻撃を受けて胃腸の粘膜細胞が傷害され、胃炎や消化性潰瘍の胃潰瘍(自家消化)を起こすのである。すなわち副作用とあたかも偶発したかのように装っているが、薬の作用機序から言えば、胃腸障害は副作用ではなく主作用である。
ところで前以て温熱刺激を与えて熱ショック蛋白質を誘導しておくと、自身の胃腸粘膜細胞を攻撃因子の消化酵素の攻撃から守って、細胞傷害を防御することによって副作用を予防する効果が報告されている。また実験的あるいは臨床研究で同様に熱ショック蛋白質を誘導しておくと、手術や抗癌剤や放射線治療のような強い侵襲と傷害性のストレスを伴う治療の副作用に対する耐性を高め、副作用を予防する効果が報告されている。 実際、アーク光線療法をこれらの病気の治療前に使うことで、治療に伴う副作用が軽く済んだ体験談は良く聞く話である。

温熱療法の適応症の検討

アーク光線は太陽光線の全波長域を放射するので温熱作用はその一部だか、これまでにアーク光線療法を通して経験したさまざまな効果に温熱作用との相乗効果が関わっていると考えて誤りはない。
特に近年になって、蛋白質と病気は深く関わっていることが解明され、その一方で熱ショック蛋白質にシャピロン機能があることが明らかになり、この観点から温熱療法の適応症が改めて検討され、広範な疾患が適応症として挙げられている。次に文献的に適応症として有効と認められる疾患とこれからの検討課題とされている疾患について触れておく。
有効と報告されている疾患は、ストレス潰瘍(薬剤副作用による胃十二指腸潰瘍を含む)、外傷、炎症、感染症、外科手術の前後、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、関節症、酸化ストレスによる動脈硬化に起因する疾患(脳血管傷害、心筋梗塞、脳梗塞)、高血圧、強直性脊椎炎、自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、うつ病などである。
今後、有効性を検討する課題とされている疾患には、蛋白質の高次立体構造形成のプロセスの異常が病因になるアルツハイマー病やプリオン病(狂牛病)への応用がある。またHIV感染者(エイズ)のウイルス量を減らせるとの報告があり、検討されている。

 

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