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2010/4/14 静岡グランシップ  講師 医学博士 宇都宮 光明

アーク光線療法で睡眠障害とうつ状態・うつ病に克つ

生体リズムを創る光線

太陽が支配している地球の自然環境に適応して進化した生命体には、朝、太陽光線を浴びることで一日を24時間(一日は25時間とされている)に同調させる体内時計を持っています。この体内時計が刻む生体リズムを日内リズム・概日リズム・サーカディアンリズムと呼びますが、単細胞生物から哺乳動物の人に至るまで、あらゆる生物に備わっています。
太陽光線が創る生体リズムは睡眠と爽快・憂鬱などの気分と深く関わることが明らかにされています。そのため生体リズムに変調を来たすと、睡眠障害とうつ状態・うつ病のような気分障害の誘因になります。今回のアークメディカル光線研修会では、太陽光線に準じたアーク光線の睡眠障害とうつ状態・うつ病に対する有用性について考察します。

睡眠障害とうつ状態・うつ病の概要

統計にもよりますが、睡眠障害(不眠だけでない)は成人の約20%、高齢者では約30%とされています。うつ(鬱)についてはうつ状態であるが生活にはあまり支障を来たさない軽症例(必ずしもうつ病ではない)から、生活に深刻な影響を及ぼす重度のうつ病まで含めて、生涯の間でうつ病と診断される可能性は15%程度と見做されています。これらの数値は現代人が少なからず睡眠障害とうつ状態・うつ病に悩まされていることを示しています。
睡眠障害とうつ状態・うつ病の誘因には共通項が少なからずあります。誘因としての生体リズムの変調については後述しますが、外に心因性のストレス、対人関係、悩み事、心配事などの心理的、社会的な事象が原因になるケース、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安神経症、適応障害など精神的な要因が原因になるケース、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群のような疾患が原因になるケースなどが挙げられます。
睡眠障害は、床に入ってから寝付くまでに時間がかかる入眠障害、眠りの途中で目覚めなかなか寝付けない中途覚醒、高齢者に多い通常の起床時刻より早く目覚める早朝覚醒、よく眠った実感がない熟眠障害の四つのタイプに分けますが、訴えが重複することは珍しくありません。うつは、うつ状態とうつ病を区分して理解する必要があると考えています。うつ状態は責任感が強く性格が几帳面な人ほど、ある程度は特定できる心理的誘因により、気分が暗く憂鬱になり、不安、自責感、不眠、食欲不振、頭痛、動悸、疲労感などを訴える状態で、症状が比較的軽いものです(気分変調症)。このような気分障害は誰にもあり得る反面、重症化することもありますので、対応には細心の注意が求められます。これに対し重度のうつ病は、特定できる心理的誘因なしに、興味や喜怒哀楽の感情を喪失し、高度の抑うつ状態に陥り、特に回復期に自殺企図など生命に関わる重大事を繰り返す恐れがあります(米国では大うつ病・major(生命にかかわる) depressionと呼ぶ)。
睡眠障害とうつ状態・うつ病の治療法には、薬物療法と非薬物療法があります。睡眠障害の治療で使われる睡眠薬は、睡眠導入薬であって治療薬ではないため、眠れない不安で離脱困難な依存症になりがちです。うつ状態・うつ病の治療薬としては、脳内セロトニンを増やす薬が開発されています(光線療法で脳内セロトニンが増えるメカニズムについては後述)。非薬物療法の多くは両者で共通に用いられていますが、その中に生体リズムを調整する高照度光療法と呼ばれる治療法があります。高照度光療法の光源に使われる機器は、アーク光線のように太陽光に準じた幅広いスペクトルを有する光線を放射する必要があります。なお非薬物療法には外に認知行動療法、自律訓練法、運動療法などがあります。

蛍光ランプは
睡眠障害とうつ状態・うつ病の誘因

本題に入る前に人工照明で使われる蛍光ランプ(クールホワイト)について付言します。照明はエジソンが白熱電球を発明して先鞭をつけましたが、その後、安価に効率良く省電力で明るさを再現する蛍光ランプが普及し(今後はLED電球)、人々の多くは人生の大半を屋内の照明の下で過ごすようになり、昼夜の別が失われ、夜の繁華街は不夜城の観を呈しています。
このように蛍光ランプは極めて短期間の間に人々の生活様式を一変させましたが、昨今、光医学の研究者により蛍光ランプが精神面に及ぼす悪影響が指摘されています。すなわち太陽光線は生体リズムが正しく働くように調整しますが、蛍光ランプは太陽光線とは異質な狭い範囲のスペクトルしか放射しないため、どんなに明るくしても生体リズムを調整することは出来ず、精神面にストレスとして作用します。具体的に述べると、脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンの分泌を促し、ストレスホルモンの副腎皮質ステロイドホルモンをストレスのレベルまで上昇させるため、交感神経を刺激してアドレナリンやノルアドレナリンの分泌が増し、ストレスにさらされた状態になります。その結果、興奮し易くなり、イライラして怒りっぽくなり、快、不快の感情をコントロールすることが難しくなりますから、睡眠障害とうつ状態・うつ病を誘発する誘因になるとされているのです。

睡眠障害とアーク光線療法


睡眠障害を改善する光線療法の光源は、体内時計をリセットして覚醒と睡眠の生体リズムを調節するものでなければなりません(睡眠相後退症候群)。この目的を達成する光線として理想的なのは太陽光線ですが、人工光線ではアーク光線のように太陽光線に準じた幅広いスペクトルと十分な明るさがある光線でなければなりません。
光線が日々の覚醒と睡眠の生体リズムを刻むメカニズムには、松果体ホルモンのメラトニンが関わっています。すなわち朝、光線が目から入ると、そのエネルギーの一部が体内時計の中枢の視床下部の視交叉上核を経て脊髄に達し、更に上頸部神経節を経由して松果体に伝えられ、松果体ホルモンのメラトニンの分泌を抑制します。この光線によるメラトニン値の変動は、生体リズムの覚醒のスイッチをオンにするだけでなく、体温、血圧、心拍、尿量、ホルモン、酵素、食欲、自律神経系、精神状態などの生命現象のリズムを昼間の活動に適したリズムにするのです。一方、日が暮れて夜になって暗くなると、光刺激がなくなるためメラトニンの分泌か増し、生体リズムは睡眠や休息に適したリズムに変わります。この生体リズムは全盲の人にもあり、皮膚に光線を感知するセンサーがあることが明らかにされています。
なお高齢者でしばしば見られる早朝覚醒や中途覚醒は、加齢に伴って生体リズムを調整する体内時計の中枢の視交叉上核の機能が低下するためとされています(睡眠相前進症候群)。またアルツハイマー型痴呆で昼夜が逆転する夜間徘徊には視交叉上核の細胞の変性や減少が関わっていると考えられています。
さてアーク光線療法は生体リズムを調整する視交叉上核の機能を正しく作動させて睡眠障害を改善する効果があります。それには朝の起床時に目を閉じて顔にBDカーボンで30分から1時間、基本照射に併せて照射して下さい。なお日勤と夜勤のシフト勤務による睡眠障害などにも、適切な時間帯に合わせて照射するのは有用な手段になります。

うつ状態・うつ病とアーク光線療法


うつ状態・うつ病の罹患率は北国で高く南国で低いこと、同一患者で朝方に症状が重く午後に軽くなる特徴的な訴えがあること、高緯度地方で日照時間が短い秋から冬に抑うつ状態が増悪してうつ病になるが日照時間が長くなる春から夏になると治る冬季うつ病 (季節性うつ病)と呼ばれる病気が知られていたことなどから、光線不足がうつ状態・うつ病の誘因になり、光線を十分に浴びると改善する効果が期待できることが示唆されていました。そのため1980年代からうつ状態・うつ病に対する光線療法の効果が検討されたのです。
光線療法のうつ病に対する有効性は、冬季うつ病で効果を認めた報告を嚆矢としますが、今は冬季うつ病の第一義的な治療法になり、抗うつ剤に勝ることが確認されています。その後、光線療法は非季節性うつ病に対しても有効なことが実証されました。
非季節性うつ病に対する光線療法の有効性を立証する証左に、脳内の神経伝達物質のセロトニンが関わっています。脳内セロトニンは脳の縫線核で必須アミノ酸のトリプトファンからビタミンB6が関与して作られ、脳全体の神経に配られていますが、快楽や興奮や喜びの神経伝達物質のドーパミンと不快や恐れや驚きの神経伝達物質のノルアドレナリンの情報をコントロールして、過剰な反応を抑制しますから、心と体のバランスを保ち、精神を安定させる作用があります。この脳内セロトニンの減少がうつ病の病状と密接に関係することが解明され、近年、セロトニンを選択的に増やす選択的セロトニン再取り込み阻害剤・Selective Serotonin Reuptake Inhibitors・SSRIが開発され、従来の抗うつ薬と比べて副作用が少ない新世代の抗うつ薬として汎用されています。
ところで光線療法には気分を爽快にして、うつ状態・うつ病を改善する脳内セロトニンを増やす作用があります。光線療法でセロトニンが上昇するメカニズムは、覚醒と睡眠の生体リズムで述べたメラトニンがセロトニンから生成されるため、メラトニンの産生が抑えられる昼間にセロトニンが上昇し、メラトニンが産生される夜間は減少する、セロトニンにはメラトニンと逆相関的な日内変動があるからです。
アーク光線療法によるうつ状態・うつ病の治療法は睡眠障害と同じです。使用時刻については、朝照射でメラトニンの産生を抑制するのが効果的とされていますが、昼照射でも同様な効果があるとする報告もあります。またパニック障害、強迫性障害などの神経症でも脳内セロトニンの減少が認められていますので、同様に有効と報告されています。

 

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