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 2008/4/17 静岡グランシップ 講師 医学博士 宇都宮光明


 太陽光はガン予防薬!驚きのビタミンD


春は骨が最も脆くなる

四月一日付けの新聞各紙は、三月三十一日に京大の衣藤亨講師が新生児の少なくとも二割がビタミンD不足になっており、四−五月生まれで特に不足気味とする研究結果をまとめ、ビタミンDは紫外線を浴びれば体内で作られるため、妊婦や母乳栄養児は紫外線を気にし過ぎないで、日焼け止めを使わずに日光浴をするように呼びかけたと報道した。
その一方で、例年春先のこの時期になると、これから夏にかけて紫外線が強まるので、紫外線を浴びないように昼の外出は極力控え、やむを得ないときは必ず日焼け止めを使うように、という類の紫外線バッシングが恒例行事として始まる感がある。
確かにわが国の紫外線量には明らかな季節変動があり、春から夏は秋から冬の四倍から五倍になる。そのため春は年間を通してビタミンDが最も不足する時期に当たり、年齢を問わず骨は最も脆くなっている。見方を変えれば、春に紫外線が強まるのは、ビタミンD不足を補う自然の恵みであり、日光浴をすれば脆くなった骨が丈夫になるだけでなく、後述するように癌や生活習慣病を予防する。すなわち衣藤亨講師のように春の陽光の恵みを受けるように勧めるのが正当であって、忌避するように勧める紫外線バッシングは、健康をドブに捨てろと言っているのに等しいのである。

■必要なビタミンDを補うのは紫外線だけ

アーク光線療法は、太陽光線の恵みは健康に欠かせないとの視点から生まれた日光療法が起源の治療法である。したがって紫外線による日焼けを起こすが、同時に必要なビタミンDを補う効能がある。
ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収、骨吸収の抑制、骨形成の促進、カルシウムパラドックスの予防などのカルシウム代謝調節作用と細胞の分化を誘導する二大作用がある必須栄養素であるが、他の栄養素と異なり、食品には魚以外含まれず、紫外線を浴びれば過不足なく生成される。なお紫外線はカルシウム代謝調節作用に必要なビタミンDを生成した後は、カルシウム代謝に影響しないビタミンD関連化合物を生成するので、ビタミンD過剰症を起こすことはない。このビタミンD関連化合物の作用は未だ解明されていないが、中でも細胞分化誘導作用との関連について今後の研究に俟つ点が多い。

さてビタミンDの所要量であるが、世界的に統一された基準はなく、日本と欧米では大きく異なっている。日本のビタミンD所要量は、くる病を起こさない一日100IU(第6次改定日本人の栄養所要量)とされているが、欧米では軽症のビタミンD欠乏症による骨粗鬆症を考慮して、一日400〜800IUは必要であり、高齢者はこれでも足りないとされている。これは軽症なビタミンD欠乏症が副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌亢進、すなわち二次性副甲状腺機能亢進症を招き、骨粗鬆症を促すと考えるからである。特に高齢者ではビタミンD生成能の低下もあって、ビタミンD欠乏症の頻度は従来考えられていた以上に高いとされ

(日本でも骨粗鬆症は中高年女性を中心に今や国民病と言って過言でない)、所要量を再評価すべきとの意見が強まっている。因みに付け加えれば、欧米人のカルシウム摂取量は日本人との食習慣の違いから不足する人はまずいない。
薬としてのビタミンDは、カルシウム代謝調節作用を有するビタミンDであり、過剰投与により重篤な副作用の高カルシウム血症を招来するビタミンD過剰症を起こす。そのため大量投与は難しく、細胞分化誘導作用を促進するビタミンDの開発が俟たれている。
言うまでもないが、今すぐ誰にでも出来る健康対策は、日焼けを恐れず紫外線を浴びて、十分なビタミンDを確保することであり、他の方策と比べてその優位性は明らかである。紫外線によるビタミンDの生成は人知を超えた神秘的な自然のルール(摂理)であり、ビタミンD不足の禍はすべて己の身に降りかかることを忘れてはならない。

 ■紫外線量と肌色の進化

太陽光線は大まかに紫外線、可視線、赤外線に分けるが、どれが欠けても今の地球の生態系はない。ここでヒト(生命)が如何に紫外線を必要としているかの証左を肌色の進化で考えて見たい。
ヒトはアフリカで誕生した猿人から進化したと考えられているが、数百万年の歳月をかけて移り住んだ環境の紫外線量に適応して肌色を進化させた。その根拠として肌色を決める皮下の基底細胞層のメラニン形成細胞の密度に肌色の違いによる差はなく、働き方が違うことが挙げられる。すなわち熱帯に住む黒人は肌が黒くてもビタミンD生成に支障はなく、強烈な紫外線から肌を守るため黒いのである。亜熱帯に住む黄色人種は、増した紫外線による遺伝子の損傷を防ぐ皮膚防護層を作るためメラニン形成細胞が働いて日焼けするが、日焼けしなから必要なビタミンDを生成する。白人は北欧など紫外線量の少ない環境でビタミンDの生成を可能な限り助けるためメラニン色素を産生する働きを失い、赤くなっても日焼けはしない。

生体には自己の身体に起きたあらゆる事象を即座に診断し、これに対応して治癒機転を促す自然治癒力が備わっている。この能力を最大限に引き出すには、生体に備わったすべての機能が正しく作動しなければならない。例示すれば、細胞が発癌遺伝子細胞に変異したことを診断し除去する機能が働けば癌にならないし、働かないと癌になる。
ところで皆さんは紫外線で皮膚癌になる話は知っているが、現実に皮膚癌で死んだ人は知らない。ここまで断言できるのは、黄色人種の日本人には患者が極めて少ないからである。皮膚癌になるのを防いでいるのは、紫外線による皮膚細胞(ケラチノサイト)の遺伝子(DNA)の傷を紫外線が活性化する遺伝子修復酵素で修復する、生命が進化の過程でどうしても必要な紫外線の恵みを受けるために獲得した、神秘的な能力を有するからである。この機序を光回復と呼ぶが、大半の人は光回復と言う言葉を知らない。

光回復は除去修復ともいうが、紫外線(UVB)で遺伝子(DNA)のピリミジン塩基(チミン、シトシン)が損傷されて形成されるピリミジン二量体を除去、修復する機構である

まず紫外線(UVA)が修復酵素の紫外線特異的エンドヌクレアーゼを活性化して、傷ついたDNAを切り取り、そこに損傷されないプリン塩基(アデニン、グアニン)が相補的に損傷遺伝子をコピーするDNAポリメラーゼにより新しいDNAが作られ、DNAリガーゼがはめ込むのである。なおこの修復の時間稼ぎに光により活性化される癌抑制遺伝子が生成するP53が関与する。
皮膚癌には、@基底細胞癌(日光が原因の皮膚癌で最も多いが、熱帯、亜熱帯に移住した白人に圧倒的に多く、黄色人種には極めて稀で、黒人にはまずない。転移せず、局所療法のみで良く、死亡することはない。そのため基底細胞上皮腫と呼ぶべきであるとの見解がある。)、A有棘細胞癌(有棘細胞癌の約四分の一は日光が原因とされているが、日光によるものは高齢者に多く、火傷の瘢痕部や放射線によるものと比べると相対的に予後は良い。)、B悪性黒色腫(ほくろが癌化したもので、日本人で最も好発する部位は足裏であり、他も日光に当たらない部位が殆どである。) がある。

■太陽はガン予防薬

太陽光線が健康に及ぼす研究史上、最大の発見は20世紀初頭に抗くる病効果で発見された紫外線のビタミンD生成作用である。その後、ビタミンDは母乳を含めて地上でとれる食品では補えないことが分かり、紫外線を浴びないと容易にビタミンD欠乏症に罹患することが明らかにされたため、かつて紫外線を別称で健康線と呼んだのである。その後の地理病理学的、疫学的研究で、ビタミンDにはさまざまな癌を予防する効果があることが報告されているが、これが今回の演題の「太陽はガン予防薬!? ビタミンDの驚きの効力」になったのである。現在、わが国では三人に一人は癌で死亡しているが、癌の一次予防に日光浴が有効とする報告を文献的に引用する。
日光浴と癌に関する最初の研究は、1980年、ガーランド博士らが地理病理学的に乳癌と大腸癌の発症率、死亡率に違いがあることに着目し、この違いは紫外線被爆量の多寡によることを報告したのを嚆矢とする。すなわち紫外線被爆量の多い地域で低く、少ない地域で高いのは、ビタミンDの生成と作用の違いに起因するとした。その後相次いで卵巣癌、前立腺癌、悪性リンパ腫で同様な報告がなされたが、2002年3月に発刊されたアメリカの医学雑誌、キャンサー(英語で癌)に、グラント博士が紫外線被爆量の多いアメリカ南西部諸州と少ない北東部諸州の癌発症率、死亡率を比較検討した結果、前述の癌に加えて膀胱癌、食道癌、腎臓癌、肺癌、膵臓癌、直腸癌、胃癌、子宮癌の十三の癌で、食事や煙草など癌に関わる既知の要因で補正しても、紫外線被爆量と癌とは明らかな関係があり、紫外線被爆量が少ない地域で多い地域に比べ死亡率がほぼ二倍に上昇する癌もあることを報告した。また1982年にショウ博士らは皮膚癌の一つの悪性黒色腫は日光を浴びない屋内労働者に多く屋外労働者の二倍になると報告し、その後の追試でも同様に報告されている。

このように十分な紫外線を浴びないと多くの癌の発症率、死亡率が上昇することから、紫外線に癌を予防する効果があることが強く示唆されるが、その作用機序について、ビタミンDの細胞分化誘導作用とカルシウム代謝調節作用を重視している。そのため紫外線の

弱い季節にビタミンDをサプリメントで補うことを勧めているが、アーク光線療法を日常の習慣にすればその必要はないことは言うまでもない。
次にビタミンDの驚きの効力の作用機序の一端を説明する。

■ビタミンDの細胞分化誘導作用

20世紀の後半、ビタミンDは殆どすべての器官、臓器の細胞にあるビタミンD受容体を介して、細胞分化を誘導する作用があることが明らかにされた。すなわちビタミンDにはカルシウム代謝調節作用だけでなく、細胞分化誘導作用の二大作用がある。
ビタミンD受容体をもつ代表的な標的器官を挙げれば、小腸粘膜上皮細胞、副甲状腺の主細胞、骨組織のようにカルシウム代謝に直接関係する器官、臓器だけでなく、脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン分泌細胞、腎臓の遠位尿細管細胞、膵臓のβ細胞、胃のガストリン分泌細胞、軟骨細胞、表皮細胞、脂肪細胞、免疫担当細胞、胎盤、腫瘍細胞など多くの器官、臓器が明らかにされている。
夏、日光浴をすると、冬、風邪を引かない、という言い伝えがある。これは経験に基づく知恵であるが、免疫応答にビタミンDが深く関わっていることを示唆する。
免疫応答は一兆といわれる多様な免疫担当細胞が役割分担に応じて分化し、相互に情報を交換し連携して作動する必要がある。免疫を担当する細胞の分化を誘導する受け皿になるビタミンD受容体は、胸腺内成熟T細胞、活性化した末梢T細胞、マクロファージ、B細胞にあり、直接作用して細胞分化を促し免疫応答を調節することが明らかにされた。すなわちビタミンDは単球からマクロファージへの分化やT細胞のヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞への分化に関わり、またT細胞に直接作用して免疫情報を交換するさまざまなサイトカイン、例示すればマクロファージが産生するインターロイキン1、 活性化T細胞が産生するインターロイキン2やガンマーインターフェロン、あるいはナチュラルキラー細胞の細胞障害活性を高めるなど、免疫担当細胞間の情報交換を密にし、それぞれの細胞が正常に機能するように誘導する。例えば、さまざまな免疫疾患でT4抗原を有するヘルパーT細胞に対しT8抗原を有するサプレッサーT細胞の機能低下があるが、ビタミンDはサプレッサーT細胞の機能低下を予防することが報告されている。またサイトカインについては、おおむね抑制する方向で作用するが、条件によっては促進する二面性が指摘されている。これらの作用は免疫応答の抗原抗体反応を制御していると考えられている。
ビタミンDの免疫応答を調整する作用は、癌予防の観点からも重要である。悪性腫瘍細胞にビタミンD受容体があることは、最初に乳癌細胞で発見されたが、その後、さまざまな腫瘍細胞で見出されており、ビタミンDは受容体を介して、腫瘍細胞の増殖を抑制して正常細胞への分化を誘導する作用があることが示唆されている

なお実験的にビタミンDに悪性腫瘍細胞の増殖を抑制して正常細胞への分化を誘導する作用があることが示されている。阿部らは1981年、ビタミンDがマウスの骨髄性白血病細胞のビタミンD受容体を介しての増殖を抑制するだけでなく、マクロファージへの分化を促すと報告した。なおビタミンDの病的な細胞の増殖抑制、分化促進作用は既に尋常性乾

癬の治療薬として用いられているが、副作用の高カルシウム血症がない優れたビタミンD誘導体の開発が俟たれる所以は、抗癌剤としての可能性が期待されているからである。

■カルシウムパラドックス

カルシウムは身体を構成する60兆といわれる細胞間の情報伝達を円滑に行い、それぞれの細胞が役割分担に応じて正常に作動することを司っているが、そのためには細胞内カルシウム濃度を細胞外カルシウム濃度の一万分の一に保つカルシウムの体内分布の恒常性(ホメオスタシィス)を維持する必要がある。この濃度差を保つためさまざまな機能が備わっているが、カルシウムが不足すると副甲状腺ホルモンのパラソルモンが働いて(続発性副甲状腺機能亢進症)、カルシウムの貯蔵庫の骨から過剰なカルシウムが溶け出て細胞内へ移動するため、細胞内カルシウム濃度が上昇して一万倍の濃度差が失われる。この状態をカルシウムパラドックスと呼ぶのであるが、“足りないから下がるのではなく上がる”、というのが逆説と思われるため、パラドックスという表現が使われるのであるが、カルシウムパラドックスはあらゆる機能に重大な支障を来たし、癌だけでなく、糖尿病、高血圧、動脈硬化、脳卒中、虚血性心疾患、心不全、アレルギー性疾患、感染症などさまざまな疾患の危険因子になる。
ここではカルシウムパラドックスが発癌に及ぼす影響に絞って説明する。カルシウムパラドックスは細胞の分裂と増殖を刺激する。この状態が続くと、細胞のDNAを障害し、発癌遺伝子の遺伝子発現を促し、癌細胞になる可能性が指摘されている。この際、癌になる臓器は何処と決まっていないが、消化器癌や乳癌だけでなく、いろいろな臓器で癌になり易くなることは確かである。またカルシウムパラドックスがあると、前述した免疫系が正常に作動しないため、癌化した細胞を見付けたり、除去したりする機能が低下し、その結果、癌化した細胞を見逃し、癌の発生を助長することになる。

■角を矯めて牛を殺す


文明の進歩は、ヒトが生きるために絶対に欠かせないものに功罪があることを明らかにした。例えば食物や酸素の発癌性である。しかし酸素を吸わない、食物を食べないということは、即、死に結び付くから明確な自覚症状がある。しかし太陽光線と地上に生息する生物の関係は、不足することを想定していない。ヒトも文明社会を築くまで、光線不足が病気の原因になることに気付かなかった。そのためくる病は長年に亘り原因不明の奇病として扱われたのである。
光線不足はビタミンD不足そのものであるが、自覚する症状はない。反面、日本人なら光線を浴びれば紫外線で日焼けする。これが安易に紫外線による日焼けをお肌の大敵として受け入れる根っこにあると考えている。
紫外線の功罪を考える際、“地球に生息するすべての生き物は自然環境に適応して生かされているのであって、自然環境は生き物の都合に合わせて変わることはない”、この単純明快な事実に気付けば、日焼けを罪として切り捨てる過ちは明らかである。

 

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