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 2006.11.3 静岡グランシップ 講師 医学博士 宇都宮光明

アテローム性動脈硬化性疾患(粥状硬化症)の危険因子として、最も関係するのは高脂血症であり、中でも高LDLコレステロール血症(≧140mg)が独立した危険因子として重視されている。その一方で、肥満、脂質代謝異常、糖代謝異常、高血圧などが個人に集積する病態概念として、これまでに「シンドロームX」、「死の四重奏」、「インスリン抵抗性症候群」、「マルチプルリスクファクター症候群」などが提唱された。何れも危険因子の集積がアテローム性動脈硬化性疾患のリスクを増大させることを強調する点では同じであるが、1999年にWHOはメタボリックシンドローム(直訳すれば代謝症候群)として診断基準を発表し、2001年にNCEP(米国コレステロール教育プログラム)はやや異なる診断基準を発表した。それぞれの診断基準を表に示す。


WHOとNCEPによるメタボリックシンドローム診断基準

 

WHO基準(1999年)

NCEP基準(2001年)

必須項目

糖尿病またはIGTまたはインスリン抵抗性

 

 

 以下のうち2つ以上

 以下のうち3つ

 

 1.肥満;BMI>30kg/u

 1.空腹時血糖>110mg/dL

 

 またはウエスト/ヒップ比>0.9(男性)

 2.高トリグリセライド血症

 

                >0.85(女性)

  トリグリセライド>150mg/dL

 

 2.脂質代謝異常

 3.低HDL-C

 

  トリグリセライド>150mg/dL

  <40mg/dL(男性)

選択項目

  またはHDL-C<35mg/dL(男性)

  <50mg/dL(女性)

 

           <40mg/dL(女性)

 4.高血圧

 

 3.高血圧

血圧>130/85mmHg

 

  血圧>140/90mmHg

または降圧薬内服

 

  または降圧薬内服

 5.腹部肥満(ウエスト周囲径)

 

 4.微量アルブミン尿

男性 102cm超(日本人85cm超)

 

  アルブミン排尿>20μg/分

女性  88cm超(日本人90cm超)

WHOの診断基準は、必須項目として中核に糖尿病(IGTまたはインスリン抵抗性)を据えているが、NCEPの診断基準には必須項目はない。肥満に関するWHO基準はBMI>30、ウエストヒップ比>0.9(男性)・0.85(女性)であり、NCEP基準はウエスト周囲径(中心肥満)、男性102cm、女性88cm以上とした。
ところでメタボリックシンドロームの成因について、WHOは特にインスリン抵抗性を重視しているのに対し、わが国の阪大名誉教授、住友病院院長、松沢佑次氏を中心にした研究グループは、アディポサイトカイン(脂肪組織由来内分泌因子)の研究から、インスリン抵抗性の更に上位の病因に内臓脂肪症候群(内臓脂肪型肥満)があるとした。しかし日本人の糖尿病などの発症患者数は欧米に匹敵するにも拘らず、欧米人のような超肥満は極めて少なく、欧米で一般的に用いられているはBMI>30を基準にすると、日本人の肥満は5%以下とされており、WHO、NCERの診断基準に当てはめると、二型糖尿病の患者でも平均的に肥満とは言い難い状況がある。そのため日本人は特に軽度の肥満に対しても抵抗性は弱いと見なして、わが国に独自の診断基準として、男性はウエスト周囲径85cm以上、女性は90cm以上で危険因子の必須項目とすると厳しく定めたのである。これが多くの日本人男性が少し太ると悩みの種になる腹囲85cmでメタボリックシンドロームとマスコミが大々的に報道したため、メタボリックシンドロームが一躍流行語に押し上げられたと考えるのは穿ち過ぎだろうか。
(わが国の診断基準は2005年度の内科学会(松沢会頭)で制定されたが、ウエスト周囲径を必須項目にし、NCEP基準の2項目以上のリスクを有する場合とされた)。

内臓脂肪症候群
(内蔵脂肪型肥満)
前述したように、わが国の研究者はメタボリックシンドロームの最上流に位置するのは内臓脂肪症候群であり、脂肪細胞が分泌する生理活性物質のアディポサイトカインが成因に深く関係するとした。すなわち正常な脂肪細胞と蓄積肥大した脂肪細胞ではアディポサイトカインの遺伝子発現が異なり、小型の脂肪細胞はインスリン感受性を亢進させたり、抗動脈硬化作用を有する生理活性物質、すなわち善玉のアディポサイトカインを分泌するが、脂肪細胞に脂肪が蓄積し肥大するにつれて、善玉のアディポサイトカインは減少し、インスリン抵抗性を惹起したり、動脈硬化を促進する悪玉のアディポサイトカインが増加する。善玉の代表は阪大の松沢氏らが1996年に発見したアディポネクチンで、その値は内臓脂肪量と逆相関を示すことから、内臓脂肪型肥満を中心に考えるべきであると主張している。
この考え方では男性は二人に一人、女性は五人に一人がメタボリックシンドロームまたはその予備軍になるが、腹囲を必須項目にする点については異論も多く、U型糖尿病を対象にした研究では、腹囲による虚血性心疾患、脳卒中の発症リスクに有意差を認めない報告がなされている。この点から腹囲を必須とする必要があるのか、必須にするとして男性より女性が大きいわが国の基準は妥当なのか、高LDLコレステロール血症や喫煙や年齢を考慮しないのは如何なものか等々、実は混沌とした状況にある。
このようなことから、実際の臨床の場では、腹囲にはあまりこだわらずに、肥満対策としての生活習慣の改善、すなわち食事や運動についての啓発や動機付けのツールとして腹囲を活用するのが現実的な対応として妥当なところと考えられている。

光線医学の立場からメタボリックシンドロームを考える

メタボリックシンドロームの最上流に位置するのはWHO基準の糖尿病またはIGTまたはインスリン抵抗性か、わが国の基準の内臓脂肪症候群かの論議はさておいて、メタボリックシンドロームは日常的に経験する病気を併せ持つ状態を表現しているのであり、病気が集積することで合併症としての心筋梗塞、脳梗塞に罹患するリスクが高まることに疑いの余地はない。そのため予防の観点から一義的に食事や運動のような生活習慣に注意が求められることには異論はない。しかし生活習慣に日光浴を加える必要性について言及されることは殆どない。
私はメタボリックシンドロームの予防に、光線、中でも日常的に紫外線を浴びる生活習慣が役立つことが強調されなければならないと考えている。肥満について言えば、日光療法を医療に取り入れたヒポクラテスの言を俟つまでもなく、光線を浴びている人は運動していなくても筋肉の衰えはなく、肥満が非常に少ないことが、多くの研究で確認されている。家畜を例に述べれば、屋外で十分に紫外線を浴びて飼育されている家畜は、屋内で飼育されている家畜ほど太らない。これは紫外線には甲状腺機能を亢進させる作用があり、新陳代謝を促してカロリー消費を増やすため体重が減ると考えられている。血中脂質については、紫外線には脂質を分解して、コレステロール、中性脂肪ともに低下させる作用がある。その結果、アテローム性動脈硬化(粥状硬化)による循環不全が改善することが報告されている。また糖代謝が改善し、血圧が低下することも明らかにされている。
このように光線療法にはメタボリックシンドロームで問題にされている肥満、脂質代謝異常、糖代謝異常、高血圧などすべてを改善する効果が期待できるのである。

 生活習慣病全般の予防とビタミンD
病気の病因には遺伝と環境が関わっており、遺伝は如何ともし難いが、環境は変えられることから生活習慣病の呼称が生まれ、肥満こそが諸悪の根源と考えて、わが国のメタボリックシンドロームの診断基準が制定された。ところで環境から受ける自然が定めた摂理に紫外線による必須栄養素のビタミンDの生成がある。ビタミンDは日光を浴びれば過不足なく生成されるのが自然の決め事であるが、現代の文明社会で生きる人々はこの環境を失ったことに気付こうとしない。
ビタミンDにはカルシウム代謝調節作用と細胞分化誘導作用の二大作用があり、生活習慣病全般の予防に重要な役割を果たしていることは、これまでにも本研修会で話したので、これまでにご参加頂いた方は復習としてお聞き願いたい。
紫外線はカルシウム代謝に関係するビタミンDを生成した後は、カルシウム代謝に関わらないが細胞分化を誘導する作用が示唆されているビタミンD関連化合物を生成する。細胞分化とは細胞が形を変え機能を変えることだが、ビタミンD受容体は小腸粘膜上皮細胞、副甲状腺主細胞、造骨細胞、腎臓の遠位尿細管細胞のようにカルシウム代謝を調節する標的器官だけでなく、膵臓のβ細胞、下垂体、甲状腺、皮膚、胃、肝臓、胸腺、脳、骨髄などから胎盤、悪性腫瘍の細胞に存在することが明らかにされており、実験的に悪性腫瘍細胞の増殖を抑制して正常細胞への分化を誘導することが明らかにされている。
さて現在、わが国では三人に一人は癌で死亡するが、十分に日光を浴びると癌を予防する効果がある。2002年にグラントは紫外線被爆量が多いアメリカ南西部諸州と少ない北東部諸州の癌罹病率、死亡率を検討し、乳癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、悪性リンパ腫、膀胱癌、食道癌、腎臓癌、肺癌、膵臓癌、直腸癌、胃癌、子宮癌の13の癌で紫外線被爆量が多い地域に比べ少ない地域では死亡率がほぼ二倍になる癌もあると報告した。また1982年にショウは悪性黒色腫が屋内労働者に多く屋外労働者の二倍になると報告している。これらの報告は紫外線を浴びるほど癌予防効果があることを示しているが、ビタミンDのカルシウム代謝調節作用と細胞分化誘導作用が関与するとされている。
ところでビタミンDはカルシウムの吸収と排泄の体外バランスと細胞内カルシウム濃度を細胞外カルシウム濃度の一万分の一に保つ体内バランスのホメオスタシスを調節する。すなわち光線不足でビタミンD欠乏状態を起こすと、カルシウムの吸収が不十分になり排泄が増すため、カルシウムの血中濃度が低下する。その結果、副甲状腺ホルモンのパラソルモンが働いて、体内カルシウムの99%を貯蔵する骨の骨吸収を促し、カルシウムが血中に溶出する。この際、過度に溶け出たカルシウムは組織内、細胞内に移行し、細胞内カルシウム濃度を上昇させ、細胞内と細胞外のカルシウムのホメオスタシス、すなわち一万倍の濃度差を保てなくなる。この状態をカルシウムパラドックスと呼ぶが、骨吸収は骨粗鬆症の進行を促し、細胞内カルシウム濃度の上昇はさまざまな生活習慣病の危険因子になる。具体例で説明すれば、ビタミンD欠乏症で骨粗鬆症が進んでいる例では、カルシウムパラドックスを起こし、動脈壁へカルシウムが高度に沈着するため動脈硬化症は進行し、動脈の平滑筋細胞内のカルシウム濃度が上昇するため血管が収縮するので高血圧症が悪化する。また膵臓β細胞のインスリンの分泌を阻害して糖尿病の、免疫担当細胞の機能を阻害して感染症や癌などの危険因子になる。すなわちカルシウムパラドックスを防ぐことは、動脈硬化症の抑制、血圧の低下、インスリン分泌の促進、免疫応答の調節など生活習慣病全般の予防対策として有用である。

終わりに

メタボリックシンドロームの背景に生活習慣、すなわち高カロリー高脂肪食の摂取や運動不足が関わっていることから、第一に生活習慣の改善が求められている。今回、光線医学の立場から、食事療法では補えない必須栄養素のビタミンDを光線で生成し補うことが、メタボリックシンドロームの予防、治療に役立つことを述べた


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